Vivaldi 道場 4 – ブラウザは自分の部屋どころか、0 円で改築しまくれる豪邸かもしれない

Vivaldi 道場は、初心者向けに Vivaldi の魅力・機能を実体験をもとに紹介していくシリーズです。第 4 回の今回は、ライターのたびちんが「タブってなんだ?」「ブラウザってなんだ?」ってところまで立ち返り、改めて考えてみたエッセイをお届けします。

タブってなんだろう—— Vivaldi 道場に入門してから、私の頭はこの問いでいっぱいになっています。Vivaldi に関わるようになって以来、ブラウザとは何か、そしてタブとは何かを考えるようになりました。今回はいつもと違ったテイストでお届けします。


わたしのブラウザ遍歴と、タブとの出会い

これから先は個人の曖昧な思い出を含んで書いていきます。面倒くさい方は「タブ」という文字が見えるところまで読み飛ばしていただければと思います。

私は 1987 年生まれです。中学生ごろから父の PC を通じてインターネットにアクセスし始め、高校生のころにはケータイ経由で i モードに触れ、そして大学から一人暮らしで個人の PC を持ち始めました。

なぜこんな昔の話をするのかというと、それらのデバイスはインターネットにアクセスするために使用していたから。デバイスが変わるごとに、インターネットを見るためのブラウザについても大きく変化しました。

中学生の頃は AOL というサービスを通じて——父が契約していたのでプロバイダか接続ツールのみだったかは定かではないのですが、紺色の三角のロゴと、あの黄色い人みたいなアイコンがいるツールを使いつつ—— Netscape というブラウザを使ってインターネットをしていました。高校生のころはケータイ独自規格のブラウザでデコ文字や無料着うたなどを探してダウンロードしていました。世界への窓であるブラウザに恩恵を受けていましたし、ブラウザを通してインターネットにアクセスすることが、 PC を使う意味の大半を占めていました。

ブラウザについて意識の変化が訪れたのは、大学生のころに IE、 Firefox、Chrome とブラウザの選択肢が広がったときです。ブラウザの見た目がカスタマイズできるという理由で Firefoxや Chrome に飛びつき、ブラウザをハート柄や、黒地にレインボーの柄に設定して喜んでいました。

そんな Firefoxや Chrome で衝撃的だったのが、「タブ」の概念です。

それまで 1 ウインドウ 1 情報しか表示できず、2 個前に見た画面に戻るためには自分の記憶力を辿って戻るボタンを押すしかありませんでした。私が「履歴」機能を発見し上手く活用できるようになるのは社会人以降になってからです。短期記憶の弱い私からすると、不便な仕様でした。ですが、タブの登場により、「覚えておきたい情報」については、別のタブを開いておくと良いのです。こんな便利なことはありませんでした。

ここでお伝えしたいのは、情報に対する向き合い方や整理の仕方が、「タブ」というものを通じて大きく転換したことです。

脳内の情報整理の仕方が、タブという一機能だけで、大きく変わります。 2024 年現在は ChatGPT などによって情報の向き合い方、思索のあり方が変化していますが、それに匹敵するほど、当時のタブの存在は私にとって衝撃でした。

ブラウザを部屋に例えてみると、思考の新しい部屋が増え、今まで 1K で住んでいた部屋が 2LDK になるぐらいの影響度とも言えます。部屋が増えているし、やれることも増えています。当然、暮らし向き、つまりブラウザの使い方は変わりました。

他者のブラウザの使い方を見る機会があったときには、まったく自分とは違う使い方をしていることに驚きました。エンジニアの夫は器用にショートカットを使ってサクサクとタブを消していました。前職の同僚は無限にタブを開いており、常時開いている数はなんと 100 も 200 もありました。それぞれの人に別々の暮らしがあるように、ブラウザの利用の仕方には個人差があるのです。

Chrome を使い始めて 10 年。私は拡張機能とプロファイルを駆使してコッテコテに Chrome をカスタマイズをしており、さらにここ数年は Loupedeck と組み合わせて物理ボタンでブラウザ呼び出しをしています。日々の「ここが使いづらいな」というモヤモヤを少しずつ解消しながら、前に進んできました。

ただ、それはあくまで 2LDK の部屋を充実させたに過ぎなかったのです。

Vivaldi に触れて変わったブラウザに対する考え方

Vivaldi に触り始めたとき、2LDK の暮らしに慣れた私の身体は、びっくりしてしまいました。「この広さで何をするんだ……?」「この部屋は何……?」「こんなレベル高そうな所に住んでる人いるの……?」といちいち驚いていました。

「ブラウザとして前と同じような使い方をするのであれば、Vivaldi じゃなくてもいいのではないか」とすら思いました。Chronium ベースの Vivaldi は、ほとんど Chrome と同じことができます。であれば Chrome でも良いのではないかと思いますが……しかし、これまでの Vivaldi 道場で、どうやらそうでもないことが分かってきました。

Vivaldi 道場 3 – Vivaldi 初心者におすすめ!7 つの便利機能

言うならば、Vivaldi の機能の多さは、まさに豪邸。これまでの認識ではとてもじゃないですが使い切れません。思考のスケールを根本から変えていかないと、活用できないのです。

例えば、タブだけを見ても、様々な機能があります。

タブの上位概念としてプロファイルやワークスペースがあり、自分の行うプロジェクトの属性でタブの表示をまるごと変えられます。

ウインドウパネルでは複数ワークスペースでタブを大量に開いていたとしても、それらを横断して検索することが可能です。

さらに、タブを表示している以外にもう一つ表示する画面を用意したいならウインドウパネルがあります。

上記の Vivaldi 道場 3 内でご紹介した機能だけでも、タブにまつわる概念から一歩先に進まないと理解できないものばかり。タブ機能を出発点として、どのように他の機能がつながっているかを、頭の中で地図を作るように考えてみるとわかりやすいかもしれません。

話は変わりますが、最近、私は自宅のリフォームのプロジェクトに取り掛かっています。家づくりについて学び始めると、大変興味深いことが次々と出てきます。例えば、「ランドリールーム」や「ファミリークローゼット」というもの。それぞれ洗濯や服の収納のための独立した部屋なのですが、近年出てきはじめた概念だそうなのです。洗濯物を干すサンルームなどと洗濯という点では似たようなものですが、実際は大きく違う機能を持ちます。独立した単機能の小部屋であることで、家事の動線が大きく便利になるのです(詳しくは検索してみてください)。私はこれらの「ランドリールーム」と「ファミリークローゼット」について調べた結果、我が家で導入をすることにしました。今まで考えもしなかった機能を知り、取り入れ、活用することに決めたのです。

ランドリールームの便利さや効率の良さに気づいた人は、もうそれがないと暮らせません。ランドリールームの概念を知らない人は、狭いお風呂前の脱衣室に、洗濯機が置かれている光景になれてしまいます。干すのもアイロンをかけることも別の場所でやらざるを得ないことに何の疑問も持たずに生きていくのです。ルンバなどの自動運転掃除機、食洗機、乾燥機つき洗濯機も似たようなものかもしれません。それらの機能をひとたび取り入れれば、常に発生する作業の効率が劇的に向上します。そしてもう無かった頃には戻れません。

このように、家や暮らし方について常に新たな機能や使い方がアップデートされており、新しい概念が生まれ続けている。自分も新しい使い方を受け入れています。

一方、ブラウザはどうでしょう。私個人で言えば、使い方を大きく変えることなく何年も経ってしまっていました。家のように、予算や工期の都合で制限があるわけでも、面積や間取りが動かせないわけでもないのに、です。

新しい機能を受け入れるためには、以下の流れが必要です。

  1. 自分の中で眠っていた困りごとに気づく
  2. その困りごとを分解し、解消できる機能を探す
  3. その機能が自分の今までの生活・ワークフローと合わせる

ランドリールームの例で言えば、

  1. 「家で風呂上がりの脱衣所と洗濯機能が一体になった空間は使いづらい。そもそも洗濯を干す場所やアイロンをかける場所がない」という困りごとに気づく
  2. 「これらを解消するためには洗濯脱衣室をとても広くするか、別々の空間にした方が良い」と考える。調べていくと、洗濯ができる空間が「ランドリールーム」と呼ばれていることを知る
  3. 工事内容としても実現可能、かつ、「他の家事をするときにランドリールームを通って洗濯ができ、家事動線の短縮になる」とわかった。ランドリールームの導入を決定する

……という流れです。生活に関わるものであれば、体験として自分が困っていることは思い出しやすいでしょう。しかし、ブラウザとなると、「何に自分が困っているか」に気づくことが難しくなってしまいます。

そもそも PC・デバイスは、毎回自分の望むような形になっているわけではありません。その PC やデバイスの使い方・文脈を理解・学習しないことには思うように利用できないのです。例えば Windows と Mac OS の閉じるボタンの位置は右上と左上にそれぞれあり、ユーザーがいくら念じても簡単にその配置が覆ることはありません。ゆえに、ある程度習熟するまでは、「PC に使われている」ような逆転現象が起こります。

ブラウザの利用でいうと、私は「ブラウザに使われている」状態に長年慣れていたのでした。いいんです。それが使いやすい形だったし、便利に使えてはいました。ただ、少しずつ「やりたいけれどできないこと」は増えていきます。我慢できないレベルまで達したときには、拡張機能でなんとかしようと探して導入することはあります。ただし、大元のブラウザを変えるという発想にまでは至っていませんでした。

自分の知らない・想像できていない部分にまで、使い方を拡張することはできません。いくら便利な機能を持つソフトウェアや素晴らしい商品が溢れていても、それを使う自分が想像できなければ、一生使うことはありません。新しい情報に触れ続ける、もしくは、自分の中での「やりたいけれどできない」という不満に気づき、強烈に違和感を覚えなければ、新しい領域に踏み込むことはできないのです。

なんだか抽象的な話ばかりしていてすみません。

ここで私からお伝えしたいのは、「これまで押さえ込んでいた、インターネットの情報検索についての小さな不満」について、少しずつ考え、気づき始める生活をしませんか、という提案です。

——本当は、ここでぴったりと画面を横に揃えたい。できれば小さい画面を出して翻訳をしていたい。よいフィード機能を持つ RSS リーダーがほしい。広告を表示せずに快適にインターネットがしたい——

その一つひとつはわがままではありません。そもそも、パーソナルコンピューターは名前からしてパーソナルなものなので、一人ひとりの理想的な使い方を実現できるようなものであるべきです。

今回の文章は、Vivaldi の宣伝だけを目的としているのではありません。自分にとっての望ましい使い方に気づくことが、今後の効率良く満足度の高い、あなたのインターネットライフをさらに充実させるものだと思っています。「今持っている選択肢が唯一かつ単一のものではない。他にも選択肢がある」という認識は、人が特定の価値観や慣習から自由になるためにも、とても重要であるはずです。

とはいえ、 Vivaldi は豊富すぎるほどの機能を備え、セキュリティやプライバシー性の向上、インターネットの民主化に力を入れています。少しでも触れてみれば、これまでのブラウザでは気づけなかった使い方を発見するきっかけにはなるのではないでしょうか。私のように驚き、最初は「難しそう!」と思った人こそ、もしかするとこれまで囚われていたブラウザの使い方から脱却するチャンスになるかもしれませんよ。

豊富な機能とカスタマイゼーションで、もっと自由にブラウジングを楽しもう!

Vivaldi をダウンロード