「相互運用性」という言葉があります。ジャーナリストの Cory Doctorow 氏によるとこれは、既存のプロダクトやサービスと同様に、新しいプロダクトやサービスを問題なく利用できるようにすることです。Vivaldi は、この相互運用性を重視しています。利用するサービスをユーザー自らが決めることができ、ブラウジングとデジタル体験全体がもっと便利で快適なものになるように、ユーザーに自由と選択肢を提供することを信条として開発を行っています。
相互運用性に関する意識が低いベンダーは、ユーザーを自分達のサービス内に閉じ込め、別のサービスに情報を引っ越しできなくして、ユーザーの選択肢を奪います。こうして、大手のベンダーが市場を支配する力を増していくのはよくあることです。
しかし最近では、公正な競争を推進し、ユーザーがテクノロジーをコントロールできる権限をもっと持てるようにしようという、慎重かつ冷静な取り組みが見られるようになりました。
例えば、U.S. オンラインアクセス法や EU・デジタルサービス法(DSA)は、 相互運用性の義務付けを提案しています。大手のテクノロジー企業に対し、スタートアップ企業や協同組合、その他の潜在的な競合他社が彼らのシステムにアクセスできるようにする許可を求めています。
ブラウザをユーザーのニーズに合ったものに
Vivaldi では、相互運用性が可能なブラウザの開発に全力を尽くすべく、まず、デスクトップ版 Vivaldi から着手しました。Vivaldi のデータを他社のブラウザに引っ越しすることも、もちろん他社のブラウザから Vivaldi にデータをインポートして引っ越てくることも可能です。例えば、Chrome から Vivaldi に、もしくは Vivaldi から Firefox に、制限なくデータを移行できます。
一方、モバイルでは状況がかなり異なります。アプリは、一般的に他のアプリのファイルやデータへのアクセスを制限されています。プライバシーの面では良いことと言える一方、ユーザーは単一のアプリに拘束されてしまうのです。例えば、ブックマークを他のサービスやアプリに自由に動かすことができません。
Vivaldi はユーザーのニーズに適応するようにブラウザを構築しています。たとえ、ユーザーが他のプロダクトに乗り換えようとしていてもです。
Vivaldi は自社のプロダクトが誰にとっても最適なものだと確信していますが、それでも、ユーザーのデータを独占したいとは考えていません。
前述した Cory Doctorow 氏が執筆した「敵対的な相互運用性」に関する記事では、Competitive Compatibility(競合する互換性)は、省略して「ComCom」とも呼ばれています。
Cory 氏によると、「競合する互換性(ComCom)」というのは、開発者の意図に反して何かを組み込めば、利用者にとっての体験を向上させるのだそうです。
「テクノロジーというのは特別な存在で、ユニバーサルなマシン(コンピューター)とユニバーサルなネットワーク(インターネット)に基づいていることで、他とは異なる種類の相互運用性の可能性が開かれます。その相互運用性とは、最初から基準を通してデザインされたものではなく、立法府により義務付けられたものでもありません」と Cory 氏は説明しています。
開発者の意図に反して何かを組み込むと利用者の体験が上がる…?なんだか腑に落ちないですよね。では、その理由を見ていきましょう。
Vivaldi でデータを自由に移行
「競合する互換性」というのは新しい概念ではありません。Cory 氏は、過去に Apple 社が「マイクロソフトの Office が Mac 製品でうまく機能しない」ことに対する解決法として、敵対的な形で相互運用性を採用したことを挙げています。
※訳注
この記事にあるような、Mac 側のドキュメント・スプレッドシートなどの事務用ソフトが Microsoft 側のソフトウェアを読み込めるようにしたことがその例でしょう。
ユーザーが色々なアプリやサービスを利用したいと考えるのは当たり前のことです。そのため、Vivaldi では、プラットフォーム間でのスムーズな移行を可能にし、データポータビリティ(ひとつのアプリやサービスから他のアプリやサービスにデータを容易に移動・移行できること、また、その容易さの度合いのこと)を特別なものではなく、むしろ一般的なものにしていくことが大事だと考えています。ユーザーのデータはユーザーのものですから。
このような理由で、Vivaldi はデータポータビリティの機能を実装し、ユーザーがデータをもっと自由にコントロールできるようにするための大きな一歩を踏み出しています。
Vivaldi では、既にブックマークやスピードダイヤルなどのブラウザデータのインポートとエクスポート、ブラウジング履歴やその他のデータタイプのインポートをサポートしています。また、ベンダーによるデータポータビリティの排除に対処し、ユーザーが包括的なデータポータビリティを確実に楽しめるように全力を注いでいます。
デスクトップ版では、つい最近、より多くの機能提供を目的として拡張を行っています。その中の機能のひとつとして、Vivaldi メモとリーディングリストのデータのインポート・エクスポートが行えるようになりました。
Vivaldi のメモ機能では、Joplin などの人気の高いメモアプリと互換性がある Markdown ファイルでデータをエクスポートできます。後で読むためにページを保存できるリーディングリスト機能では、Instapaper などのサービスやアプリなどと互換性のある CSV 形式をサポートしています。
エクスポートのプロセスはとても簡単です。[ファイル] > [エクスポート] > [メモ]、あるいは [ファイル] > [エクスポート] > [リーディングリスト] にアクセスしましょう。メモやメモフォルダー、あるいはリーディングリストを簡単にエクスポートできます。
データのインポートも楽々行えます。[ファイル] > [アプリケーションまたはファイルからインポート] にアクセスして、ドロップダウンメニューからメモフォルダーやリーディングリストを選択できます。
規制機関はユーザーの味方
データの移行を許可するブラウザやアプリ、サービスはあまり多くありません。今後さらに Vivaldi がデータのインポート・エクスポートに関するオプションを増やしたとしても、他のブラウザが同じようにしない限り、Vivaldi からのインポートや Vivaldi へのエクスポートを行えるサービスは少ないままでしょう。
興味深いことに、欧州の主要なメディアは、EU 一般データ保護規則(GDPR:General Data Protection Regulation)のプライバシーとデータエクスポートに対する考え方に注目しています。
GDPR の第 20 条 には、EU の一般データ保護規則のデータポータビリティに対する権利として、顧客のデータはサービス間で移行可能であるべきだと記載されています。
一方で、サービスプロバイダーは独自のプラットフォームから競合者のプラットフォームへの直接のデータ移行を行えるようにすることが求められます。しかし、GDPR では、これがどのように機能すべきかを厳密に述べていません。それでも、「サービスには、体系的で、一般的に利用されており、機械が解読できる形式を使用し、管理者からの妨害無しに個人のデータを別の管理者に送信する権利を有することが求められ・・・」と強調しています。
これは、ユーザーが一つのサービスからダウンロードして競合するサービスに再度アップロードする必要なく、サービスプロバイダーがデータの移行を円滑に行えるようにするのが EU での消費者の権利のひとつであることを意味しています。
Safari と Chromeで立ち往生?
iOS や Android モバイル端末でのアプリケーションのサンドボックス化(アプリケーションを特定の領域に隔離して外部にアクセスさせない仕組み)は、セキュリティ面では重要です。一方、Safari や Chrome などのブラウザから、Vivaldi や Firefox にデータをスムーズに移行したいユーザーにとっては大きな障害となっています。サンドボックスの基本的な目的は、安全な環境を整え、不正なアクセスを防止し、システム全体のセキュリティを強化するため、隔絶した領域内にアプリケーションを制限することです。
異なるモバイルブラウザ間でデータを移動しようとすると、この厳密に隔絶された状態は厄介な問題になり得ます。サンドボックスはアプリ間での直接の通信を禁じ、データの同期や移行を簡単に行えないようにしているのです。
例えば、ブラウジング履歴やブックマーク、パスワードなどを Safari や Chrome から Vivaldi や Firefox へ、あるいは、その反対に移行したい場合。サンドボックスのメカニズムにより、データの遷移は不可能ではないものの、困難になります。
プロセスが面倒なものとなり、手動の操作が求められます。この制限によってユーザー体験が複雑になり、別のブラウザを試してみようという気持ちもそがれてしまうかもしれません。
今日、デジタルの世界では、柔軟性と選択肢が重視されています。
サンドボックスは、iOS や Android のプラットフォームでは、異なるモバイルブラウザ間でのデータの移行スムーズなインテグレーションを妨げるものと捉えられる可能性があるのです。また、先に述べた EU 一般データ保護規則の 20 条にも適応していません。
Vivaldi としての解決方法は、よりオープンで、協調的、なおかつ、非競合的なインターネットを目指すことです。
Vivaldi はベンダーによる制限からユーザーを解放すべく、業界間の連携を求めます
ユーザーの権利を強化し、もっとオープンなデジタルエコシステムを作り上げていくため、相互運用性についての概念の推進が重要です。
GDPR の 20 条は、データポータビリティに対する消費者の権利を後押しし、サービス間での直接のデータのやり取りを促進する重要性を強調しています。
今後も、挑戦は続きます。特に、iOS と Android デバイスでのサンドボックス化やブラウザ間のスムーズなデータ移行に対する妨害などは課題として残ります。
Vivaldi はこれらの難題に屈することなく、ユーザーが真の自由とデータに対する制御権を手にすることができるよう、もっとオープンで非競合的なインターネットを提唱します。
そして、ユーザーが自分のデータを好きなように扱うことができるよう、今後も他社のサービスとさらに協力していきたいと考えています。
原文 – Why you can’t move bookmarks from one browser to another on iOS/Android
訳 – Mayumi
Team Vivaldi
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