社会と同様、ウェブも人間が思考を重ね、比較し、自らが何かを発見することで進化します。Vivaldi はブラウジングという行為は能動的であるべきだと考えています。ブラウジングは、探索し、疑問を投げかけ、自分自身の判断を下すという行為です。
業界を見回すと、人工的なアシスタントがブラウザに直接埋め込まれるようになっており、答えを得るための近道のように提案されています。Google はページの内容を要約するために Chrome に Gemini を組み込んでいますが、ごく近い将来、ユーザーの代わりにタブを操作し、サイトをナビゲートする機能も追加されるでしょう。Microsoft は画面に表示される内容をスキャンし、ユーザーの行動を予測する新しいモードを含む AI ブラウザとしての Edge を推進しています。
このような動きは、アドレスバーは単なる AI への指示入力欄となり、ユーザーの探索する喜びを無気力な傍観に変えてしまいます。
この変化は、私たちが馴染んできたウェブに大きな影響を及ぼします。独立機関の調査を参照すると、AI 要約が提供されている場合、ユーザーはオリジナルのソースまで遡ってクリックしにくくなったという情報があります。つまり、ウェブに新たな情報を発信するパブリッシャーやクリエーター、コミュニティへのアクセスも減るということです。PewResearch による最新の調査では、AI 要約が提供され始めてから、従来の検索結果をクリックするユーザーはおおよそ半減したそうです。出版社は、AI による概要がリンクの上に表示される場合に通信が大きく減る可能性があると警告しています。
※日本チーム追記：日本でも、朝日新聞社と日本経済新聞社が、生成AIを使った検索サービス米「パープレキシティ」に対し、記事を無断で複製されたとして賠償を求める訴えを起こしています。
AI は便利な一方で、非常に高いリスクを無視できません。AI ネイティブのブラウザとエージェントプラットフォームが次々と登場する一方、規制当局はオンラインでの情報へのアクセス方法を改革するための対策について議論を重ねています。ブラウザ戦争の次の段階は、タブの読み込み速度に関するものではなく、誰が知識を仲介し、誰が利益を得て、誰が情報へのアクセス経路を支配し、誰がユーザーを収益化できるか、という点にシフトしています。
今日、他のブラウザ企業は次々と「ウェブ体験を AI でコントロールする」方向に向かう中、Vivaldi はここに明確な約束をします：
「Vivaldi は AI に対する自らの立場を表明します。Vivaldi は誇大に宣伝されたものではなく人間を選択し、探求する喜びを無関心な傍観に転換させることはありません。自らが探索することがなくなれば、ウェブは興味あるものではなくなってしまいます。私たちの好奇心は酸欠状態になり、ウェブの多様性も死んでしまうのです」
ヨン・フォン・テッツナー、Vivaldi CEO
機械学習の分野は基本的には興味深い分野であり、実際に役立つ機能を生み出す可能性を秘めています。
しかし、既に大量の誤った情報が広まる中、さらに誤情報を上乗せするようなリスクを冒すことはできません。Vivaldi は、より厳格な方法が利用できるようになるまで、LLM（大規模言語モデル：大量のテキストデータを学習し、人間の言語を理解して生成する AI モデル）を使用してチャットボットや要約ソリューション、あるいはフォーム入力用の提案エンジンを追加することはしません。
Vivaldi は、今まで通りウェブを探索したい人々にとっての安全な場所としてあり続けます。今後も好奇心旺盛な人やパワーユーザー、研究者、そして、自主性を重んじる人々のためにブラウザを構築していきます。もし、AI が知的財産を盗んだり、プライバシーや開かれたウェブを侵害したりすることなく、同じゴールに向けて貢献するのであれば、Vivaldi は AI を利用するでしょう。反対に、人々を受動的な消費者に変えてしまうのであれば、利用しません。
Vivaldi はユーザーにブラウザをコントロールする権限を提供し、ユーザーが使用したいと思うあらゆるツールと組み合わせてブラウザを利用できるようにすることで、自らのアイデンティティを貫き続けます。私たちが目指すのは、ユーザーが自分のペースでウェブを閲覧できる、パワフルでパーソナル、そしてプライバシーに配慮したブラウザを構築することです。私たちは、ウェブ探索を単なる受動的な消費に変えることはありません。
Vivaldi はウェブを今後もより良いものとしていくため、挑戦を続けていきます。
